音楽ダイアリー

お勧めの音楽アルバムを中心に、コンサート情報や音楽関連書籍を紹介します。

≪メイキング・オブ・モータウン Making of Motown≫

おすすめ度: ★★★(3つ星が最高点)

監督:ベンジャミン・ターナー、ゲイブ・ターナー

2019年作

 

 モータウン・レコード創始者であるベリー・ゴーディの半生を描いたドキュメンタリー映画で、会社設立時の1959年からモータウン本社がロサンゼルスに移転される1972年までの軌跡を追っている。現在のベリー・ゴーディと盟友スモーキー・ロビンソンが当時を振り返り、彼らの会話にあわせて当時の映像が挿入され物語が進行していく。ベリーとスモーキーが人生最高の日々を昨日の思い出のように愉快に語りつくす様は、見ていてほほえましくなる。

 

 自動車工場の組み立て作業をしていた経験から、ベリー・ゴーディはレコード会社設立を思い立つ。工場の流れ作業のように、作詞、作曲、演奏、歌い手を完全な分業により、最高の楽曲を作り出す生産体制だった。

 

 ちっぽけな一軒家から始まり、世界的な一流企業にまで発展していく様は最良のアメリカン・ドリームそのもの。ベリーが特異だったのは経営者として優れていただけでなく、作詞作曲、音楽プロデューサーとして優れたアーティストでもあったことだ。

 

 モータウンは、音楽を愛する人々が集まったアットホームなファミリー企業であった。しかも、黒人音楽を提供しながらも、社員は黒人だけでなく、白人もユダヤ人も在籍する音楽共同体であった。また、所属したミュージシャンたちの多くは下層階級の出身であり、ショービジネスでのエチケットも満足に知らなかったため、彼らを教育する場としも機能していた。

 

 本作の最大の見どころは、マーヴィン・ゲイの『What’s going on』の誕生秘話だ。モータウンでは「政治的、社会的なことは歌わない」ことが経営理念であった。しかし、マーヴィン・ゲイは知人の黒人たちがベトナム戦争へ出兵され、命を落としていることに思い悩み、その想いを歌うことを決意する。

 一方、ベリーはモータウンの方針に反するマーヴィン・ゲイと対立するが、結局、マーヴィンの意向に沿って、レコードを発売し、大ヒットを記録した。当時を思い返し、自分は間違えていたと率直に認める現在のベリーの潔さに脱帽した。

 

 デビュー時の若き日のステーヴィー・ワンダーとマイケル・ジャクソンの貴重映像は必見。10代そこそこの神童たちに目が釘付けになること必至。

 


映画『メイキング・オブ・モータウン』予告編