≪スライ・ストーン Sly Stone≫
おすすめ度: ★(3つ星が最高点)
監督:ウィレム・アルケマ
2015年作
1960年代後半から1970年代前半にかけて、ファンクの立役者として一世を風靡したスライ&ザ・ファミリー・ストーン。その中心人物であるスライ・ストーンは1975年以降、表舞台から姿を消し、たまにマスコミを賑わかすことといったら、養育費の未払いで起訴されたとか、おもちゃの拳銃を所持して逮捕されたといった不祥事ばかりだった。
監督のウィレム・アルケマは行方知れずとなったスライの捜索に乗り出す。かつてのバンドメンバーたちに体当たりのインタビューを敢行し、スライの足跡を追い求める。
監督はスライを捜しだすことができるのか。スライはなぜ音楽界から突然失踪してしまったのか。現在どんな生活をしているのか。
まるでミステリー映画のようなスリリングな展開で、次第にこうした疑問が氷解していく。
詳細は本作をぜひ観てほしいが、巨大な才能に恵まれながらも、悪徳マネージャーの悪だくみによって、スライの人生が踏みにじられてしまったことが判明する。
自宅や財産を失いながらも、「いまでも毎日、曲作りをしている」とスライが語るシーンはファンの胸を打つ。
眉村ちあきメジャーデビュー2周年記念ライブ
眉村ちあきメジャーデビュー2周年を記念し、コロナウイルス禍を考慮しての無観客ライブ。
1時間のライブの中に、眉村ちあき天性の魅力がふんだんに詰まっている。
音楽という極上のおもちゃを手に入れ、狭いスタジオの中で元気いっぱいに歌いまくる姿は痛快。公園で遊び回る幼児のように、無邪気に戯れている様を見ていると、頬が緩んでしまう。音楽はかくも愉快で自由であることを再認識できる。
34分から始まる『おじさん』は名曲。九州に転勤してしまうおじさんとの、つかの間の出会いと別れをアコースティックギターで切々と歌いあげる。
≪UNSEEN WORLD≫ BAND-MAID
おすすめ度: ★★★ (3つ星が最高点)
BAND-MAIDによる4枚目のフル・アルバム。
ライブ活動を中心に実力を培い、アルバムごとに着実に「進化」を遂げ、本作ではハードロック・バンドの名に恥じない最高のできばえとなっている。
中でもライブでは定番曲となっている初のインストルメント曲“without holding back”は、彼女たちの卓越した演奏力とアンサンブルの巧妙さが発揮され、聴きごたえ十分。
≪Fiction≫ Maison book girl
【Amazon.co.jp限定】Best Album『Fiction』[Amazon完全限定生産仕様盤 CD+2BD]
- アーティスト:Maison book girl
- 発売日: 2020/06/24
- メディア: CD
おすすめ度: ★★ (3つ星が最高点)
2014年、元BISのコショージメグミを中心にして結成された4人組アイドルによる、初のベスト・アルバム。
音楽プロデューサーはクラッシックや現代音楽に影響を受けたサクライケンタ。
透明感のあるサウンドデザインとこれまで耳にしたことのないような変拍子が、妙に耳に馴染む。聴けば聴くほど心地よくなる魔力を秘めている。
アイドルを現代総合芸術の域にまで押し広げた楽曲を堪能してほしい。
≪3776を聴かない理由があるとすれば≫ 3776 みななろ
おすすめ度:★★★ (3つ星が最高点)
静岡県富士宮市発のローカル・アイドル、井出ちよののソロユニット。3776で「みななろ」と読む。富士山の標高3776メートルにちなんで名付けられた。
富士山の一合目から山頂までの観光案内と、少女の成長物語を合体させるという無謀な挑戦を見事に結実させたコンセプト・アルバム。
音楽プロデューサーは石田彰。AKB48に感銘を受けて、アイドルのプロデュースを志したらしいが、AKB48とは似ても似つかない実験性あふれる楽曲ばかり。
大人の知性に基づく実験性と少女の天性がぶつかり合って、唯一無二のアルバムに仕上がっている。周到に計算された大人の知的な企みが、自由奔放な少女の感性によって軽々と凌駕される醍醐味を味わうことができる。
アイドルの衣装を身にまとった現代前衛音楽の極北であり、アイドル・ソングこそ現代音楽の最先端にあることを誇示した記念的作品。
≪GET OVER ~JAM PROJECT THE MOVIE~≫
映画『GET OVER -JAM Project THE MOVIE-』【2021年 2月26日公開】予告映像(ロングバージョン)
おすすめ度: ★★ (3つ星が最高点)
アニメソングを歌う5人組のユニットJAM PROJECTのドキュメンタリー映画。
2000年の結成時から2020年のコロナ禍での20周年無観客ライブまで、メンバーのインタビュー、レコーディング風景、コンサート風景などの映像を織り交ぜながら進行していく。
結成時、アニソンは世間一般ではまだまだマイナーで、一部のオタクたちのニッチなジャンルでしなかった。メンバーの遠藤正明はアニソンを忌避していた過去を素直に語っている。
ところが、アニソンは国内だけでなく海外でも急速に認知され、2008年の初のワールドツアーではさまざまな国のファンから熱狂的な歓迎を受ける。
順風満帆に進んでいた矢先、2012年に福山芳樹が膜下出血で入院し、暗雲が立ち込める。「いつまでもJAM PROJECTが続くとは思っていない。明日、終わってしまうかもしれない」という緊張感の中で再出発する。
レコーディング風景が興味深い。互いの長所を生かし、そして短所を補い、切磋琢磨しながら、さらなる歌の高みに昇りつめたいという盤石の意志が、スタジオ内に充満していた。
それはひとえにアニソンを通じて、世界中の人たちとつながりたいという熱い思いからだ。
アニソンに関心のない人たちにこそ観てもらいたい一作。