音楽ダイアリー

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≪KPP 2014 JAPAN ARENA TOUR≫ きゃりーぱみゅぱみゅ

 

 

  おすすめ度: ★★★ (3つ星が最高点)

  2014年に行われた国立代々木第一体育館とロンドンでの公演を収めた2枚組DVD。

 

  原宿かわいいカルチャーの創始者である増田セバスチャンの手がけたファンタジックな舞台セットは、きゃりーの楽曲の世界観を見事に体現している。

総勢40名以上ものキャラクターたちがきゃりーと共に夢の世界でいきいきと動いている。きゃりーのコンサートは、アミューズメント・パークであり、メガ・トイ・ストアであり、サーカスでもあることを実感する。

 

  彼女のコンサートの最大の特徴は、観客参加型であること。公演の途中で、きゃりーは何度も観客に呼びかけ、曲にあわせて振り付けをしたり、隣の客と肩を組んだりすることを求める。

つまり、きゃりーのコンサートを見ることは、彼女が統治する不思議の国の市民として参加することであり、彼女の掛け声のもと、市民全員が仲よく幸せにならなければならないという大前提のうえで成立している。

 

  驚かされるのは客層の幅広さだ。小学校に上がる前の園児から、派手に着飾ったテーンエイジャー、そして40、50代の大人に至るまで広範囲に及んでいる。遊園地に出かけるように家族連れで来ている客もたくさん見受けられる。こんなにバラエティに富んだ観客を集められるのは、きゃりーの構築したファンタジーの世界が特定の年齢層だけでなく、あらゆる年代に受け入れられていることの証左である。

しかも、観客は日本人だけでなく、外国人にまで及び、世界に通じるジャパニーズ・カルチャーの一角を担っているといってよい。きゃりーによる世界征服を狙った活動の一環ともいえるくらいだ。

 

  ラストのMCで「一時は汚い芸能界から引退しようと思っていた」と涙ながらに告白する。引退を思いとどまったのは、彼女のファンのためにファンタジーを送り続けたいという強い意志からだった。過酷な現実に直面したとき、その現実に対抗しうる、あるいは救済しうる手段は、現実を凌駕できるほど想像力豊かな鉄壁なファンタジーでしかない。そのことをきゃりーは身をもって確信しているはずだ。