≪MTVアンプラグド MTV Unplugged≫ パール・ジャム Pearl Jam
おすすめ度: ★★ (3つ星が最高点)
1992年3月に収録されたパール・ジャムによる、MTVの名物番組アンプラグドの初CD化。
パール・ジャムは、ニルヴァーナ、サウンドガーデンとともに1990年代のグランジ・ブームをけん引した最重要バンド。
彼らが奏でる不穏な重低音は、生きることへ困難さや社会の閉塞感を体現し、圧倒的なリアルでリスナーに迫る。
個人的な生い立ちを語る歌詞でありながら、同世代に生きる多くの者たちが共鳴できるものとなっている。
【Alive アライブ】で、エディ・ヴェダーは歌う。
母は言った 息子よ ちょっとお前に話があるの
お前が父さんだと思った人は父さんじゃなくて・・・
お前が13歳 独りで家に座っていた時
お前の本当の父さんは死んでいった
お前に会わせられなくて御免よ
でも話せてよかった
俺はまだ生きている
アンプラグドという性格上もあってか、装飾をそぎ落としたソリッドな音は楽曲のよさを際立たせている。全7曲のうち6曲は、傑作アルバム“ten テン”からの選曲。
≪octave≫ 桜エビーず
おすすめ度: ★★★ (3つ星が最高点)
私立恵比寿中学の妹グループとしてデビューした桜エビーずの2ndアルバム。業界大手スターダストプロモーション所属らしい、王道のアイドルグループ。高い歌唱力、優れたパフォーマンス、アイドルらしい愛らしいビジュアルと三拍子がそろった、個性派ぞろいのメンバー6人の相性は抜群。
思春期の真っただ中にいる女の子にしか歌えない純度100%の粒ぞろいの楽曲ばかり。アイドル史上最強の1曲『リンドバーグ』は必聴。
第8回アイドル楽曲大賞2019「アルバム部門」1位獲得。
なお、2019年11月に桜エビーずからukkaに改名し、桜エビーず名義としては本作が最後となる。
≪Reframe theater experience with you≫ Perfume
映画『Reframe THEATER EXPERIENCE with you』予告編
おすすめ度: ★★(3つ星が最高点)
監督:佐渡岳利
2019年にLINE CUBE SHIBUYA(旧渋谷公会堂)のこけら落としとして公演された最終日の模様を収めたもの。
Perfumeの結成20年、メジャーデビュー15年の企画にひとつであり、Reframeというタイトルは Perfumeのこれまでの歩みと現在、これからの未来を再構築した意味をこめている。
音楽プロデューサーの中田ヤスタカ、Perfumeとは『アクターズスクール広島』時代からの教師である演出振付家・MIKIKO、真鍋大度を中心とするクリエイティブ集団・ライゾマティクスによる最先端テクノロジーを用いた演出によって、これまで誰も見たことがないステージを展開している。
最後の挨拶で、あーちゃんがいっていたように、どこまでも「とんがった」ステージで、半端じゃないとんがり具合だ。Perfumeはメジャー・デビュー時からとんがっていた。彼女たちの出世作となった『ポリリズム』だって、とんがりすぎて事務所が二の足を踏むほどだったが、彼女たちの出世作となった。
大衆的なポップ・ミュージックを前衛的な総合芸術の高みまで向上させながらも、ファンを置いてきぼりにすることなく、なお大衆性を失っていないチームPerfumeの手腕には素直に脱帽してしまう。
『Challenger』で締めくくるあたりにチームPerfumeの決意のほどがうかがわれる。この曲は新曲であるが、当時のPerfumeのマネージャーがこの原曲を聴いて、中田ヤスタカにプロデュースを依頼することを決めたという。つまり中田ヤスタカとPerfumeとの出会いの曲である。歌詞とアレンジを変え、Perfumeの新曲として新たに生まれ変わった。結成20年の大ベテランになっても、常に新しいことに挑戦し続け、変わり続ける、決意表明が歌われている。『STAR TRAIN』と同様Perfume自身を歌った重要な曲。
≪FRIENDS≫ NAMBA69
おすすめ度: ★★ (3つ星が最高点)
Hi-STANDARDの難波章浩率いる別プロジェクトNAMBA69の3rdミニ・アルバム。
特典のDVDは見ごたえ十分。TSUTAYA O-EASTでのライブ映像が1時間収められている。バンドと観客から生み出される熱量が半端じゃない。勝手にステージに上がってきて、ダイブを繰り返す客が続出。
NAMBA69「YOU'RE MY FRIEND」Official Music Video
≪柳都芸妓≫ RYUTist
おすすめ度: ★★(3つ星が最高点)
新潟を拠点として活動する女性4人組のアイドル・グループRYUTistの3thアルバム。
アルバム・タイトルの「柳都」とは、柳が多くあることからつけられた新潟市の別称。
タイトル通り、一昔前の懐かしさを漂わせながら、山下達郎のような洗練されたシティ・ポップの仕上がり。複数の作詞・作曲家から提供されていますが、アルバムとしてしっかり統一感があります。
RYUTist - 夢見る花小路【Official Video】
スキップしながら新潟の街を歩きたくなるような楽曲ぞろいです。
≪メイキング・オブ・モータウン Making of Motown≫
おすすめ度: ★★★(3つ星が最高点)
2019年作
モータウン・レコードの創始者であるベリー・ゴーディの半生を描いたドキュメンタリー映画で、会社設立時の1959年からモータウン本社がロサンゼルスに移転される1972年までの軌跡を追っている。現在のベリー・ゴーディと盟友スモーキー・ロビンソンが当時を振り返り、彼らの会話にあわせて当時の映像が挿入され物語が進行していく。ベリーとスモーキーが人生最高の日々を昨日の思い出のように愉快に語りつくす様は、見ていてほほえましくなる。
自動車工場の組み立て作業をしていた経験から、ベリー・ゴーディはレコード会社設立を思い立つ。工場の流れ作業のように、作詞、作曲、演奏、歌い手を完全な分業により、最高の楽曲を作り出す生産体制だった。
ちっぽけな一軒家から始まり、世界的な一流企業にまで発展していく様は最良のアメリカン・ドリームそのもの。ベリーが特異だったのは経営者として優れていただけでなく、作詞作曲、音楽プロデューサーとして優れたアーティストでもあったことだ。
モータウンは、音楽を愛する人々が集まったアットホームなファミリー企業であった。しかも、黒人音楽を提供しながらも、社員は黒人だけでなく、白人もユダヤ人も在籍する音楽共同体であった。また、所属したミュージシャンたちの多くは下層階級の出身であり、ショービジネスでのエチケットも満足に知らなかったため、彼らを教育する場としも機能していた。
本作の最大の見どころは、マーヴィン・ゲイの『What’s going on』の誕生秘話だ。モータウンでは「政治的、社会的なことは歌わない」ことが経営理念であった。しかし、マーヴィン・ゲイは知人の黒人たちがベトナム戦争へ出兵され、命を落としていることに思い悩み、その想いを歌うことを決意する。
一方、ベリーはモータウンの方針に反するマーヴィン・ゲイと対立するが、結局、マーヴィンの意向に沿って、レコードを発売し、大ヒットを記録した。当時を思い返し、自分は間違えていたと率直に認める現在のベリーの潔さに脱帽した。
デビュー時の若き日のステーヴィー・ワンダーとマイケル・ジャクソンの貴重映像は必見。10代そこそこの神童たちに目が釘付けになること必至。
≪フー Who≫ ザ・フー The Who
おすすめ度: ★★★ (3つ星が最高点)
フーの13年ぶりのアルバム。日本では彼らの人気は驚くほど低いが、ビートルズやローリング・ストーンズと並んで1960年代の3大バンドと呼ばれている。
I don’t care!(構わないさ!)
本作はフーとしかいいようのない勢いのある「All this music must fade」から始まる。
「こういう音楽はいずれ消え去る」と歌いながらも、その歌詞とは真っ向から反発するような攻撃的で疾走感のあるサウンド。フーのファンだったら、1曲目からあげあげモードに突入してしまう。
オリジナル・メンバー4人のうちすでに2人は他界しているが、フーはひとつも変わっていない。常に今という時代に異を唱える代弁者であり、反逆者である。
ボーカルのロジャー・ダルトリー、ギターのピート・タウンゼントとも70代。70代になっても10代の瑞々しい感性を失っていない。その事実に驚かされる。老年であるからこそ手に入れることができた英知と処世術が歌詞にも反映され、若僧には書けない味わい深い詞になっている。
ロジャーが名盤の誉れ高い「『四重人格』以来の傑作だと思う」と評していることからも、自信のほどがうかがえる作品。